「フォックスキャッチャー」(2015)

大阪ステーションシティシネマでフォックスキャッチャーを観ました。

今作のチャニング・テイタムはすごい。とにかく暗くて、すごく傷ついていて、マッチョな肉体とは裏腹に、今にもこなごなに割れてしまいそうなガラスで出来ているかのよう。これが、あの、マジック・マイクの、チャニング・テイタム?

彼の子供達へ向けた視線。お金を受け取る際に名前を間違えられるタイミング。めちゃくちゃ不味そうなハンバーガーやインスタント麺を何故か生でバリバリと頬張る後ろ姿。そういったものを見ているだけで、主人公のマークにとってオリンピックの金メダリストという経歴は、結局のところ彼の人生をどうにもしてくれなかったという答えが映画開始の15分で痛々しいほどに伝わってきました。そしてその語り口の鮮やかさに、唸りました。

ある夜、突然、そんなマークへ身元を名乗らない超怪しい電話がかかってきます。「明日の朝一番の飛行機にのってこっちへ来い」と、普通に考えてすごく怖いと思うんですけど…「オレ…誰かに認められたのか…?」と目を一気に輝かせるマークがいじらしすぎる。そしていざ呼び出された超豪邸におそるおそる入ってみると現れたのがどう見ても…なんか…人としての具合が悪そうなオジサン…これが特殊メイクが施されたスティーブカレルなのですが最初画面にあらわれた時にはびっくりすると思います。血が流れてなさそうすぎる…

マークとデュポン、これがこの二人の出会いです。とてもいびつな形の友情の物語のはじまりです。

マークとデュポンは非常に大きなコンプレックスを抱いています。そしてデュポンに関して言うと、本当に悲しいひとです。その悲しさを解消しようと力づくで物事を進めてしまいます。進めれるのです。お金があるから。けれどもその悲しさは、彼の人生の中でなんどもこだましていくものでした。そしてそれは後に、大変な悲劇へと導いてしまいます。

その引き金となってしまったのはマークの兄、デイブの存在です。デイブの明るさ正しさ全うさ、そして何より、孤独「じゃなさ」が大きく何かを狂わせます。(マークラファロの醸し出す健全さがすごい!)この映画を観ていて、私も、デイブの正しさに、思わずひるんでしまいたくなるシーンがありました。孤独を知らない人の暖かさが圧倒的に冷たく感じてしまいました。そういう時に、わたしは本当に小さな理解ですが、この後とんでもない悲劇を起こしてしまったデュポンの深い深い闇を…少しでもわかるような気持ちになります。

その他にも、デュポンなりの他人に対して気遣いが(ほんっとーにデュポンなりのですが)いくつか伝わってきたりするシーンもあり、なんとも言えないような切ない気持ちにもなりました。そんな思い出をくれた映画でした。

…ところでパンフレットに書いてあったのですが、ベネットミラー監督は数年前にいきなり見ず知らずの人から「あんたはきっと映画化したくなるはずだ」とこの事件の記事のコピーを渡されたことがこの映画を作ることになったきっかけだったんですって…!(ぞわ〜)